第1問 問1

日本のGDP統計や交易条件(公益利得・損失)および金融政策に関する以下の問いに答えなさい。

公益利得・損失
三面等価の原則から名目GDI(国内総所得)と名目GDP(国内総生産)は同じ値となる。しかし、実質ベースでは、GDIとGDP が同じ値になるとは限らない。輸出品が値下りし、輸入品が値上がりすれば国外へ所得が流出し、実質所得(購買力)が 低下する。この実質所得の変化が公益利得・損失となる。

問題のグラフ図表1をみるとcのグラフが右目盛りと記載があるので、GDP,GDIがマイナスの値となることはないから、 これが、公益利得であることがわかる。
次に、上記のように公益利得は実質GDIと実質GDPの差であり、グラフcの値が0以上にある場合にグラフbが上にきている ことから、グラフが実質GDIであることがわかる。
■答え:グラフa GDP、グラフb GDI、グラフc 公益利得

第1問 問2

財務省の「貿易統計」の貿易取引通貨別比率(2014年下半期)を見ると、輸出の円建て比率は36%程度と、輸入の円建て 比率(21%程度)を大きく上回っている。輸出入の円建て比率が一定であり、また、短期的に輸出入の円建て契約価格と 外貨建て契約価格がともに一定である場合を考える。(実行)為替レートのみが変化した場合に公益条件(指数)がどのように 変化するか、図表2を参考にしながら円高と円安に分けて説明しなさい。

デフレーター
物価指数のこと。GDPデフレーター=名目GDP ÷ 実質GDP
輸入デフレーターが高いと輸入する際の実質物価が高くなるので、公益条件には不利となる。
輸出デフレーターが高いと輸出する際の実施物価が高くなるので、公益条件には有利となる。
■答え:
円安の場合、輸入デフレーターの上昇が輸出デフレーターの上昇を上回り、公益条件は悪化する。
円高の場合、輸入デフレーターの低下が輸出デフレーターの低下を下回り、公益条件は改善する。

第1問 問3

日本銀行は、2013年4月に、2年間で2%のインフレ目標達成を目指して、量的・質的金融緩和(異次元緩和)を 導入した。2014年秋以降、ニューヨークの原油価格(WTI)は急落に転じ、こうした中で、日本銀行は2014年10月 に追加緩和を発表した。2014年9月に100ドル近辺であったWTIは、12月には50ドル台前半まで低下している。

(1)原油価格が低下したとき、どのようなルートでCPI(消費者物価指数)に影響を及ぼすのか、説明しなさい。
■答え:原油価格の低下により、原油製品の低下やエネルギーコストの低下により物価が低下してCPIを押し下げる。

(2)交易条件の改善には、原油等の資源価格が変動するルートと、為替レートが単純に変動するルートがあるが、これらが 日本経済に与える影響の違いを説明しなさい。
■答え:資源価格が下がると輸入デフレーターが下がり、公益条件が改善し日本経済にプラスとなる。
為替レートが円高になることにより、公益条件が改善され日本経済にプラスの影響を及ぼす一方で、円高により 輸出企業が打撃を受け、マイナス要因ともなりうる。

第9問 問4

中央銀行の金融政策の運営の枠組みとしてのインフレーション・ターゲッティングについて、その利点と 問題点を説明しなさい。

■答え:
利点:インフレ目標値をアナウンスすることで、市場のインフレ期待を安定化させることができる。 また、金融政策の透明性が高まり、政策運営の説明責任を明確にすることができる。
問題点:金融政策目標を物価指数という単一の指標におくことの妥当性について疑問が残ることや、 ルールベースの政策運営であるため、柔軟な対応ができなくなる可能性があるという問題点がある。

第9問 問5

「異次元緩和」を進めていくと、どういう現象がおこりうると考えられるのか、以下の問いに答えなさい。

(1)メリットを1点挙げ、説明しなさい。
■答え:
金利低下により銀行貸出が増加し市場に貨幣が出回るので、景気上昇期待が高まる。


(2)デメリットを1点挙げ、説明しなさい。
■答え:
異次元緩和の主要手段である長期国債の大量購入が日銀による財政赤字の穴埋めだと市場に受け止められれば、 日本国債の信任低下から日本国債価格の暴落に繋がる可能性がある。


(3)上記のメリット、デメリットを踏まえて、日本銀行の政策運営について総括しなさい。
■答え:
日銀は、インフレ目標を達成できるよう金融緩和を実施するとともに、行き過ぎたインフレや国際暴落を引き起こさない よう最善の注意を払って金融政策を行っていくべきである。
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