第3問 問1

図表1で示されたように、ファンドBの投資ユニバースは東証第1部全銘柄から一部の銘柄を除いている。除外銘柄を選ぶ際に考慮 すべき点を3つ挙げなさい。

■答え:
(1)取引コストが大きくなる、または計画通りに該当銘柄を調達できなくなる可能性があることから流動性が小さい銘柄を除外する。
(2)適切な投資判断ができない可能性があるため、投資情報を適切に取得できないような銘柄を除外する。
(3)倒産リスクがある銘柄を除外する。

第3問 問2

ファンドAを同じ最小分散ポートフォリオのファンドBと比較したとき、ファンドAの長所と短所をそれぞれ述べなさい。

最小分散ポートフォリオ
個別株のリスクが最小となるように銘柄を組み合わせ、組入比率を調整するポートフォリオのこと。 効率的フロンティア曲線上で最もリスクの小さいポートフォリオ。

■答え:ファンドAは17業種のETFに投資を行っているため投資コストが低くてすむという長所がある、一方でファンドBに比べ 投資対象数が少ないため最小分散化の精度が下がり、リスクが高くなる(標準偏差が大きくなる)。 いないためリスクはファンドBより高いという短所がある。

第3問 問3

均等ウェイト・ポートフォリオであるファンドCと、時価総額ウェイトの株価指数であるTOPIXをベンチマークとするパッシブファンド との売買回転率の違いを述べなさい。

売買回転率
運用資産額に対する売買金額の比率である。

時価総額加重平均型株価指数(時価総額ウェイト)
組入銘柄の時価総額合計を、基準となる一時点での時価総額合計で除算して求める。 株価平均を算出する株価平均型株価指数と違い、一部の小規模な値がさ株に影響される心配が少ない。

■答え:時価総額ウェイトの株価指数をベンチマークにするファンドであれば、リバランスを行う必要がないが、 ファンドCでは、全銘柄を均等に保有する必要があるために値段変動等によるリバランスが発生し、売買回転率はTOPIXに比べ 高くなる。

第3問 問4

図表3のサイズ・ファクターに対するベータβsmbに注目すると、ファンドCのサイズ・ファクター・ベータはプラスで あるのに対して、ファンドEのそれはマイナスになっている。その理由を説明しなさい。

Fama-French(ファーマ=フレンチ)3ファクターモデル
資本コストの有名な推定方法には、「CAPMモデル」、「ファーマ=フレンチ3ファクターモデル」、「Carhart(カーハート)4ファクターモデル」 がある。
ファーマフレンチ3ファクターモデルは下記の3つのファクターから資本コストを求めようとするモデルである。
fmkt:マーケットファクター(Rindex ― rf) ・・・市場ポートフォリオ(時価総額加重平均型株価指数)とリスクフリーレートの差
fsmb:サイズファクター(Rsmall ― Rbig)・・・時価総額順にソートした下半分:小型株(small)グループと上半分:大型株(big)グループのリターンの差(smallグループ - bigグループ)
fhml:バリューファクター(Rhigh ― Rlow)・・・簿価時価比率(PBRの逆数)でソートして、上:バリュー株(0~30%)、中(30%~70%)、下:グロース株(70%~100%)の3グループにわけたときの上半分(high)と 下半分(low)のリターンの差(highグループ - lowグループ)

式で表すと下記の通り。
Ri = αi + βi,mktfmkt + βi,smbfsmb + βi,hmlfhml

αi・・・銘柄i固有の期待リターン βi,mkt・・・銘柄iのマーケットファクターのエクスポージャー(感応度)
βismb・・・銘柄iのサイズファクターのエクスポージャー(感応度)
βi,hml・・・銘柄iのバリューファクターのエクスポージャー(感応度)
ここで、各ファクターは銘柄に関係なく、市場や対象の銘柄グループ(日本市場の全銘柄等)を対象に決められた共通の値なのに対し、 各βはその銘柄が各ファクターにどの程度影響を受けるかといった銘柄固有の値である。

■答え:上記説明の通り、サイズファクターに対するβがプラスということは、時価総額の少ない小型株を多く保有しており、マイナスという ことは大型株を多く保有しているということである。ファンドCは東証1部の全銘柄を均等に保有しているため、小型株のウェイトが大きくなりプラスと なっているのに対し、ファンドEは中、大型株が多いためマイナスとなっている。

第3問 問5

図表3のファーマ=フレンチの3ファクターモデルにおけるバリュー・ファクターfhmlはどのように生成されるかを簡潔に説明しなさい。

PBR:Price Book-value Ratio(株価純資産倍率)
株価 ÷ 純資産 or 時価 ÷ 簿価

■答え:簿価時価比率でソートして上30%のグループ(バリュー株)のリターン平均と下30%のグループ(グロース株)のリターン平均の差が バリュー・ファクターとなる

第3問 問6

図表2を見ると、ファンドDのα1は0.24%と高く、統計的に有意に正となっている。その理由を、図表3のファーマ=フレンチの 3ファクターモデルの推定結果と比較して考察しなさい。

図表2ではマーケットファクターと個別株の要因に分けて分析しており、図表3はさらに細かいファクター(サイズファクターと バリューファクター)に分けて分析している。
サイズファクターはサイズが小さい(時価総額小さい)株のリターンが高い程高くなる。よって、βがプラスだと小型株のパフォーマンスが良いと 成績のよいファンドとなる。
バリューファクターは、簿価時価比率(簿価/時価)が大きい(バリュー株)のリターンが高い程高くなる。よって、βがプラスだと バリュー株のパフォーマンスがよいと成績がよいファンドとなる。
■答え:図表3のBHMLをみるとマイナスの値となっており、この期間のグロース株の高パフォーマンスが影響していると 考えられる。

第3問 問7

図表2を用いて、ファンドBのβTPX=1という帰無仮説を有意水準5%で両側検定しなさい。ただし、自由度が十分に大きいものと考えて、9ページ の標準正規分布を用いること。

仮説検定
ある仮説が正しいといって良いのかを統計学的に判断するための方法を言う。 仮説が正しいと仮定した上で、それに従う母集団から、実際に観察された標本が抽出される確率を求め、その値により判断を行う。 その確率が十分に(予め決めておいた値より)小さければ、その仮説を棄却する(すなわち仮説は成り立ちそうもないと判断する)。

■帰無仮説・・・真偽を判定しようとする仮説

■有意水準・・・帰無仮設の元でほとんど起こりそうもないことが起これば、その帰無仮説は成り立っていない(帰無仮設が棄却された)と考える。
どの程度の確率で発生する事象が起きた場合に棄却するかの線引きを行う確率を「有意水準」という。標準的には5%と1%が用いられる。

■答え:まずは、標準誤差を求める。ファンドBの標準誤差は、t値を求める式より、17.1=(0.71-0)/標準誤差。
標準誤差=0.0415
※ここで明示はされていないがβtpxのt値は、帰無仮説βtpx=0を前提として求められていると仮定して 標準誤差を算出している。

よって、帰無仮設βtpx=1としてt値を求めると、t=(0.71-1)/0.0415=-6.988
設問では、自由度が十分大きいとみなして、標準正規分布に従うとするとあり、5%で両側検定を行うためz0.025の値 を正規分布表から探すと0.9750→1.96が求まり、-1.96と-6.98を比較すると-6.98の方が正規分布表の外がにあるため、帰無仮説βtpx=1 は棄却される。

t値 = (標本平均の差)/標準誤差
標準誤差 = 標準偏差/√n
n・・・サンプルサイズ


第3問 問8

X年金基金は、図表1の5つのファンドのうち、αが最も高いファンドBを組み入れることを検討している。同基金の日本株 アクティブ運用全体のアルファ獲得を狙う際に、αの大きさ以外に考慮すべきことを1つ挙げて説明しなさい。

解答の観点としては、ファンドBを組み入れることで、リスクが高くならないか、もしくは既存の運用手法と差がでるかということである。 その観点から、考慮すべきことを1つあげればよい。
■答え:ファンドBのアクティブ・リスクが、すでに採用しているアクティブ・ファンドのアクティブリスクとの相関が高くないこと。

第3問 問9

スマートベータ戦略に基づく運用と一般的なアクティブ運用について、運用コスト(運用報酬+売買執行コスト)の違いを説明しなさい。

■スマートベータ戦略と従来のアクティブ運用との違い・・・詳細が定義されたポートフォリオの組入れ銘柄の選定基準(配当利回り、低ボラティリティ、低PBR) 、ウェイト決定方法、リバランスのタイミング等のポートフォリオ運用ルールが存在し、そのルールが公表され、その時々の株式市場動向に 係らず、ルールに則った運用を行うことを前提としている。
■答え:一般的なアクティブ運用に比べ、運用ルールがある程度決まっているため、ファンドマネージャの負担も小さく運用報酬は小さい。 また、銘柄選定基準にもよるが、総じて売買回転率も小さいと考えられるため、売買執行コストも小さくなり、運用コストは、一般的な アクティブ運用に比べ小さくなることが期待される。

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