A社の会計処理に関する以下の問いに答えなさい。A社の決算日は3月31日である。
なお、計算問題の答えは四捨五入して千円単位で示すこと。

第9問 問1

下線部(ア)の指名委員会等設置会社が、取締役会の下に設ける3つの委員会のうち、指名委員会以外の2つの委員会の 名称を書きなさい。また、3つの委員会の構成員について述べた次の文中の空欄①~②に当てはまる用語を書きなさい。

各委員会は、いずれも(①)がメンバーの(②)を占め、監査・監督というコーポレートガバナンスの重要な役割を果たす。



取締役会設置会社では、別途業務執行を監督するためのメカニズムが要求され、下記のいずれかが要求される。
(i)・・・監査役を置く
(ii)・・・指名委員会等設置会社形態をとる
(iii)・・・監査等委員会設置会社形態をとる

指名委員会等設置会社
指名委員会等設置会社は指名、監査、報酬の各委員会を設置する会社であり、その構成は 社外取締役が過半数を占めることとされている。

指名委員会・・・株主総会に提出する取締役の選任や解任に関する議案の内容を決定する。
監査委員会・・・執行役・取締役の職務に関してその適否を監査する。
報酬委員会・・・個人別の役員報酬を決定する。

■答え:監査委員会、報酬委員会
①社外取締役 ②過半数

第9問 問2

下線部(1)のスチュワードシップ責任について、説明しなさい。

スチュワードシップ責任とは、ざっくり言えば、機関投資家の投資に対して果たす責任ということである。
■答え:機関投資家が、投資先企業とその事業環境等に関する深い理解に基づいた建設的な対話等を通じて、当該企業の 企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客、受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任。

第9問 問3

図表1の2013年度と2014年度の財務データを比較し、企業価値の向上を意識したX社の経営効率化の成果が表れている財務指標を 2つ選び、具体的な数値の変化を示して述べなさい。なお、2012年度の総資産と自己資本は2450億円であった。

■答え:
売上高営業利益率の向上。2013年度:60/2400=2.5%、2014年度:160/2300=7.0%に改善した。
ROEの改善:2013年度:36/((2450+2380)/2)=1.5%、2014年度:96/((2380+1930)/2)=4.5%に改善した。


第9問 問4

X社は2014年度に、現金配当100億円と自社株買いを実施した。図表1の要約財務データから、2014年度の自社株買いの金額を 計算しなさい。

クリーンサープラス関係
今期自己資本 = 前期自己資本 + (今期純利益 - 今期配当)
■答え:
クリーンサープラス関係から、配当だけであれば、、2380億円+96億円-100億円=2376億円となる。
しかし、2014年度の実績の自己資本は1930億円であるから、この差分が自社株買いした金額となる。
よって、2376億円-1930億円=446億円

第9問 問5

類似上場企業の倍率を用いてX社の企業価値や株式価値を評価するマルチプル法を用いる場合、PERと企業価値EBITDA倍率の どちらを用いるのが好ましいか、理由をつけて述べなさい。

マルチプル法
株価等の市場価格や利益、売上高といった会計数値を、同業他社や業界標準と比較することにより、現在の企業価値や株式 価値が相対的に割高なのか割安なのかを判断する方法。
マルチプル = 時価BS/PLの収益
マルチプルとして使用する比較指標はさまざまなものがある。

[株式価値の観点からみたマルチプル]
株価収益率(PER)=株価/1株あたり純利益
株価純資産倍率(PBR)=株価/1株当たり純資産 [企業価値の観点からみたマルチプル]
企業価値EBITDA倍率=企業価値/EBITDA=(株式時価総額+有利子負債)/(営業利益+減価償却費)
■答え:
PERは1株あたりの当期純利益を利用した指標であるため、有利子負債による節税効果をうけるが、 企業価値EBITDA倍率は営業利益を利用するため、節税効果が反映されていない指標である。 このため、他の類似企業は有利子負債を利用しているため、企業価値EBITDA倍率を利用する方が このましい。

第9問 問6

X社の自己資本コストを7.5%として、現時点(2014年度末)の企業価値評価額を計算しなさい。 ただし、2016年度以降のFCFは、年率2%で永続的に成長する(例えば、2016年度のFCFに1.02を掛けた値)と仮定する。

企業価値の算出
企業価値(=株式の価値 + 負債の価値)を求める方法には大きく2つある
(1)株式の価値と負債の価値をそれぞれ算出して足し合わせる方法
(2)企業の価値は、その企業が生み出すキャッシュフローの期待値を加重平均資本コストで割り引いた現在価値になると考えて算出する方法

企業価値 = 

Σ
t=1
t期のキャッシュフローの期待値

(1+加重平均資本コスト)^t
WACC(ワック):加重平均資本コスト
株主資本コストと負債資本コストを加重平均して求める。

WACC = 
株式の価値

株式の価値+負債の価値

×自己資本コスト+
負債の価値

株式の価値+負債の価値

×税引後負債コスト
■答え:
上記の(2)の方法により企業価値を求める。
まず、加重平均資本コストを求める。本問では有利子負債がないため、WACC=自己資本コストとなる。
さらに、2015年度のFCFの予測値は110億円であり、成長率2.0%である。
これより、

企業価値 = 
110億円

(1+0.075)


110億円(1+0.02)

(1+0.075)^2

・・・
等比級数の公式より、企業価値=110億円/(0.075-0.02)=2000億円
これに、現預金の120億円を足して、2120億円となる。

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