第5問 問1
Y氏がA社に注目した理由について、考えてみよう。
(1)A社は継続して安定成長する企業として、売上および利益の成長以外に、業界内でのポジションに関係した特徴に注目している。
Y氏はどのような特徴に注目したと考えられるか述べなさい。
業界内のポジションについては、与えられている情報から業界全体の情報が読み取れるのは、資料2と資料3である。
このうち、資料2の国内スナック菓子市場の推移から市場シェアが計算できると考える。2014年の国内市場の売上高は1841億円なので、
市場シェアは1841/3416=53.9%なので、かなりの市場シェアを握っていることがわかる。
■答え :国内市場シェアが53.9%と過半数を握っており、中長期的には67%と圧倒的なシェア獲得を目指していることから、
価格競争力の優位性等からA社が継続的な成長を遂げられると考えY氏が注目したと考えられる。
(2)(1)で指摘したような特徴のある企業は、一般的に良好な財務的特徴を示す傾向がある。A社のどの財務諸表に最も表れているのか、理由を
付けて述べなさい。
■答え
財務諸表:営業利益率
理由:圧倒的なシェアを有している企業は規模の経済が働き、他企業に対する競争力を持つ、また、価格支配力も有していることが多いため
高い営業利益率を確保することができる。
(3)Y氏はROEの変化にも注目した。2010年度と2014年度のROEを比較すると、巨額の特別損失を計上した2011年度を除き、ROEは年々改善している。
2010年度と2014年度のROEの3要素のうち、ROEの上昇に貢献した要素について具体的な数字を示して説明しなさい。また、ROE上昇の主たる
要因を2つ指摘しなさい。
ROEの上昇要因の分析を行う問題であり、問題にはデュポンシステムでの分析結果の表があるため、これを参照すると、
資産回転率、レバレッジはほとんど変化がないが、売上高純利益率が高くなっていることがわかる。
また、海外の営業利益率が国内の3.0%と比較し、12.1%と突出して高く、海外での売上高が伸びていることも、要因の一つと
考えられるため、この2つを記載すればよい。
■答え
要因1:国内でのシェア拡大とコスト削減による売上高営業利益率の向上。
要因2:営業利益率が高い海外での販売拡大。
第5問 問3
A社の配当性向は2015年度の会社予想で25%と、東証企業平均の30%台を下回る状況にある。一方、A社は海外展開のために今後数年は設備投資が
膨らみ、フリー・キャッシュフローがほぼゼロとなる見通しである。また、負債調達は考慮せず、
ROEは現状水準以上を維持し、株主が要求する資本コスト7%とする。
(1)A社が当面の配当性向を東証上場企業平均の30%台に高めることについて、株主価値の観点から賛成できるか否か、理由をつけて述べなさい。
■答え:
反対。A社は成長企業であり2014年度実績で11.6%と株主資本コスト7%を上回っている。このため、剰余金を配当とするより、
内部留保し事業に投資することで株価、株主価値の向上が期待できる。
(2)今後、成長投資を含めた設備投資額が減価償却費の範囲内に収まり、フリー・キャッシュフローが創出されるようになれば、
現状の配当政策を見直すべきとY氏は考えている。株主価値を向上させる観点から、どのように財務政策を見直したらよいかを
述べなさい。なお、手元流動性の水準はすでに満たされているものとする。ここでは、株主価値を「企業が生み出すキャッシュフロー
の現在価値のうち株主に属する価値と、配当の現在価値との合計」とする。
■答え:FCFの創出により現預金が蓄積すると資本効率が悪化してROEの悪化要因となるため、余剰キャッシュは
増配か自己株式取得により株主に還元し手元流動性を高めない財務政策に切り替えることが望まれる。