債券で覚えること
マコーレデュレーション(Dmac)
Dmac = |
1 P |
( |
C 1+r |
+ |
2C (1+r)^2 |
+ ・・・ |
n(C+F) (1+r)^n |
) |
C:クーポン、F:債券額面、r:割引率
修正デュレーション(Dmod)
コンベクシティ(BC)
BC = |
1 P |
Σt=1→n( |
(1+t)tC (1+r)^t |
+ |
(1+n)nF (1+r)^n |
) × |
1 (1+r)^2 |
債券価格(P)
債券価格変化率
債券価格変化率 ≒ |
-Dmod×Δy+ |
1 2 |
BC×Δy^2 |
Δy:利回り変化
キャリー
キャリー = |
(y(T)-r)× |
1 D(T) |
Δt |
ロールダウン
y(T):残存期間のパーイールド、D(T):修正デュレーション、r:短期金利、Δt:債券保有期間
修正デュレーションを一致させたバーベルとブレットの比較
| バーベル | ブレット |
保有債券 | 短期債と長期債 | 中期債 |
コンベクシティ | 大きい | 小さい |
利回り | 低い | 高い |
他の条件が等しければコンベクシティが大きい方が金利の変化に強い
インフレ連動債
固定利付債と異なり、物価水準の変化に応じて支払利息額(クーポン)と償還価格が増減する債券。
インフレ連動債と固定利付債の利回差は「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」と呼ばれ、
市場の予想する将来のインフレ率を示俊している。
第6問
A氏はベンチマーク対比の超過収益獲得を目指す債券のアクティブ・ファンドマネージャーであり、
今後1年間の運用方針を検討している。現在のA氏の見通しはポートフォリオのポジションに反映済
みであるが、リスクシナリオなどを再評価しようと考えている。
なお、現在の国債市場の利回り曲線(スポットレート・カーブ)は図表1のとおりである。
事業債とのスプレッドは格付によって異なるが、同じ格付なら年限によらず一定とする。
また、利子率はすべて年一回複利表示である。
第6問 問1
A氏の現在のポジションについて考察し、以下の問いに答えなさい。
(1)A氏のポートフォリオの属性を、国債、事業債、その他の3つを同ウェイトとしたベンチマークと比較すると、図表2のとおりである。
このとき、ベンチマークに対して最も大きなプラスの超過リターンが得られるのは、債券市場の状況がどのように変化した場合か。
利回り曲線の水準、そのた傾き(ツイスト)、信用スプレッドの変化について、以下の空欄①~③に当てはまる言葉を答案用紙の選択肢から
選び、〇で囲みなさい。
「利回り曲線の水準は(①)、傾きは(②)、信用スプレッドは(③)場合に最も大きなプラスの超過リターンが得られる。」
図表2 属性比較(ポートフォリオの対ベンチマーク格差)
種別 | ウェイト差 | 複利利回り差 | 修正デュレーション差 | 平均格付 |
国債 | -20% | -0.13% | 0.0 | ‐ |
事業債 | 20% | 0.33% | 3.0 | 同等 |
その他 | 0% | 0.00% | 0.0 | 同等 |
全体 | 0% | 0.16% | 1.6 | ‐ |
■答え
①利回り曲線の水準:低下、②傾き:フラット化、③信用スプレッド:縮小する
①修正デュレーションがベンチマークより長いので、金利感応度が大きく利回り曲線の水準が低下した場合に超過リターンが得られる。
②修正デュレーションがベンチマークより長いので、平均残存年限が長く、金利感応度も大きい、利回り曲線の傾きがフラット化した場合に超過リターンが得られる。
③信用リスクのある事業債をオーバーウェイト、信用リスクのない国債をアンダーウェイトしていることから、信用スプレッドが縮小した場合に超過リターンが得られる。
(2)A氏のポートフォリオのうち、国債部分の属性を比較した結果は図表3の通りである。
図表3 国債部分の属性比較
| 複利利回り | 修正デュレーション | コンベクシティ |
ポートフォリオ | 3.02% | 5.8 | 64 |
ベンチマーク | 3.15% | 5.8 | 50 |
①A氏のポートフォリオの年限構成は、ベンチマークと比較してブレット型してブレット型とバーベル型のどちらですか。理由も簡潔に述べなさい。
②A氏のポートフォリオはベンチマークと比べ、どのようなリターン特性を持っているか、図表3の数値の関係に基づいて説明しなさい。
■答え
①バーベル型、理由:ベンチマークに比べ、修正デュレーションが同じで、利回りが小さく、コンベクシティが大きいから。
②利回りは低いがコンベクシティが大きいため金利変化に強いく、金利の変動が大きい場合にベンチマークに比べ超過リターンとなる。
第6問 問2
ストラテジストB氏の今後1年間の景気・市況見通しは以下の通りである。
(a)国内景気はコンセンサスよりも強いと見込まれ、デフォルト率は低下し、株価は上昇する。
(b)中央銀行は現在の金融緩和政策を継続する。
(c)インフレ率が上昇する確度が高まり、長期国債利回りは100ベーシスポイント程度上昇する。
(1)B氏の見通しに従うと、利回り曲線の水準と傾きはどのように変化すると予想されますか。理由も述べなさい。
■答え
理由:利回り曲線の水準は上昇し、傾きはスティープ化する。
(a)と(b)から利回りの水準は上昇し、(c)から長期国債の利回りが上昇しスティープ化する。
(2)A氏は現在のポジションとB氏の見通しが対立する部分については、ベンチマークと乖離するリスクを回避することにした。
(a)~(c)の中で現在のポジションと対立する見通しを示し、そう考える理由も説明しなさい。また、A氏はどのようなポートフォリオ
の調整を行えばよいか、変更する債券の種別、ウェイト、平均デュレーションに則して説明しなさい。
■答え
対立する見通しと理由:ポートフォリオの修正デュレーションがベンチマークより長いので利回り曲線がスティープ化する場合には、
損失が大きくなる。よって、見通し(c)と対立したポジションとなっている。
ポートフォリオの調整:上記の理由から修正デュレーションを短期化するようポジション調整を行う。
第6問 問3
政府もインフレ率上昇に積極的と考えられ、それを後押しするような政策が予想される。そこで、インフレリスクのエクスポージャー
に対応するため、A氏はインフレ連動債の特性を調べ、その利用を検討することにした。
インフレ連動債において、現在のコンセンサスよりも高いインフレ予想が価格に織り込まれる場合、ブレイク・イーブン・インフレ率(BEI)
はどのように変化するか、BEIの構成要素を式で示してから説明しなさい。また、名目債とインフレ連動債の価格がそれぞれどのように変化
するかも述べなさい。なお、低流動性による価格付けの歪みはないものとする。
■答え
BEI=名目利回り-実質利回り=名目債複利利回り-インフレ連動債の利回り
BEIの変化:インフレ予想が価格に織り込まれるとBEIが上昇するが、インフレ率の上昇と実質利回りは直接関係しない。
名目債の価格変化:名目債の価格はBEIの上昇分だけ上昇する名目利回りによって価格が左右されるため、価格が下落する。
インフレ連動債の価格変化:上記の関係より、インフレ連動債価格は実質利回りを反映するので、高いインフレ予想が織り込まれても
価格変化はない。
第6問 問4
A氏は利回り確保のために、コーラブル債の利用を考えることにした。
(1)クーポンと満期が同じ全額満期償還債とコーラブル債では、価格が高いのはどちらですか。理由も述べなさい。
■答え:全額満期償還債
コーラブル債は発行体に早期償還の権利が与えられているため、債券保有者は早期に償還されるリスクを有しているため、
通常の全額満期償還債にくらべ価格が安くっなっている。
(2)コーラブル債は金利の上昇と下落に対して、非対称な価格変化をする特徴がある。満期5年だが2年目に期限前償還が可能になる
コーラブル債の実行デュレーションを、全額満期償還(5年債、2年債)と比較して答案用紙に図示しなさい。
■答え:下記図の通り