第8問 問1

図表1は、株式ポートフォリオとそれに対応するベンチマークのデータであり、ウェイトは期初の値、リターンはその後1年間の 値をそれぞれ示している。

図表1 3セクターから構成されるポートフォリオとベンチマークのウェイトとリターン
セクターウェイトセクターリターン
ポートフォリオベンチマークポートフォリオベンチマーク
セクター1353032
セクター2203001
セクター3454053

(1)この株式ポートフォリオのベンチマークに対する超過リターンはいくらですか。

ベンチマークに対する超過リターンを算出するには、それぞれのセクターのポートフォリオのウェイトとリターン、 ベンチマークのウェイトとリターンをかけた値の差を求めればよい。
よって、(0.35×3+0.2×0+0.45×5) - (0.3×2+0.3×1+0.4×3)=3.3-2.1=1.2%

■答え:1.2%

(2)セクター配分効果はいくらですか。

セクター配分効果(資産配分効果)とは、リターンがベンチマークと同等だった場合、ポートフォリオのウェイトとベンチマークのウェイトの差 によりどの程度のリターンの差があったかということである。
よって、(0.35-0.3)×2+(0.2-0.3)×1+(0.45-0.4)×3 = 0.1-0.1+0.15=0.15

■答え:0.15%


(3)個別銘柄選択効果はいくらですか。

個別銘柄選択効果とは、ポートフォリオのウェイトがベンチマークと同等の場合に、ポートフォリオとベンチマークでどの程度のリターンの差が あったかということである。
よって、(3-2)×0.3+(0-1)×0.3+(5-3)×0.4 = 0.3-0.3+0.8=0.8

■答え:0.8%


(4)セクター配分効果と個別銘柄選択効果のうち、超過リターンへの貢献度が高いのはどちらか、根拠を示して答えなさい。

■答え:セクター配分効果0.15%、個別銘柄選択効果は0.8%であるから個別銘柄選択効果の方が貢献度が高い。


第8問 問2

図表2は、株式ポートフォリオの月次収益率を求めるための基礎データである。

図表2 株式ポートフォリオの基礎データ
月初のポートフォリオの市場価値100億円
月末のポートフォリオの市場価値120億円
1ヶ月の日数30日
10日目のキャッシュインフロー(資金流入)20億円
10日目のキャッシュインフロー後の市場価値125億円
25日目のキャッシュインフロー(資金流入)10億円
25日目のキャッシュインフロー後の市場価値118億円

(1)この1ヶ月間の株式ポートフォリオの時間加重収益率(TWRR)はいくらですか。なお、答えは%表示で小数第2位まで示すこと。

時間加重平均なので、キャッシュフローに変更があった時点でのそれぞれの収益率を求めればよい。
この問題では、月初~10日目、10日目~25日目、25日目~月末の3つの期間の収益率を考えればよい。
月初~10日目は元手が100億円で125億円-20億円=105億円になったので、収益率は105/100=1.05となる。 10日目~25日目は125億円の元手で118億円+10億円=128億円になったので、収益率は128/125=1.024、最後の期間も同様に計算し これらの収益率をかけて求めればよい。
よって、(125-20)/100 × (118-(-10))/125 × 120/118 = 1.05 × 1.024 × 1.016949 =1.0934  よって、収益率は9.34%

■答え:9.34%

(2)図表2のデータに対して、修正ディーツ法を適用した月次の収益率は8.96%となり、時間加重収益率(TWRR)による測定結果と 差異が生じる。その理由を説明しなさい。

修正ディーツ法
時間加重収益率(TWRR)測定の計算作業負荷を軽減するために、一定期間(1ヶ月等)の 内部収益率の近似値を使って全体の時間加重収益率を算出する内部収益率リンク法の採用 が一般的になっている。
内部収益率の近似を行う際に用いられる方法。
R・・・内部収益率
MVF・・・期末の市場価値
MVB・・・期首の市場価値
CF・・・期中のネット・キャッシュフロー
FW・・・キャッシュフローとその発声期間との積和
R = (MVF - MVB - CF) / (MVB + FW)

▼時間加重収益率との誤差の要因
a)キャッシュフローの大きさ
b)発声時期の認識の問題
c)ポートフォリオ価値の変動性の問題

■答え:修正ディーツ法は時間加重収益率を求める際に内部収益率を近似する方法である。測定誤差の要因としては、 運用残高に対するキャッシュフローの大きさ、発声時期の認識のズレが測定誤差を招く原因としてあげられる。

第8問 問3

類似した複数のポートフォリオの中で、相対的なパフォーマンスの優劣を比較する方法は、ユニバース比較(ピア比較)といわれる。 ユニバース比較は、ポートフォリオのパフォーマンスを直接比較するので、実務的にもよく使われているが、いくつかのバイアスが 発生する可能性に注意する必要がある。このような注意すべきバイアスについて、事例を1つ挙げて簡潔に説明しなさい。

ユニバース比較におけるバイアス
a)残存者バイアス
パフォーマンスが低迷しているポートフォリオは解約され存在しなくなり、その時点でユニバースから除外され、 優良なポートフォリオのみが、ユニバースに含まれるというバイアスが生まれる。
b)分類のバイアス
どのユニバースにいれるか明確がな定義が難しいポートフォリオの分類の誤りにより、運用力が正しく比較、評価され ないバイアスが生まれる。
c)サンプルのバイアス
同一マネージャが同一手法で運用する実質的に類似のポートフォリオが、委託者やアカウントの違いにより複数ユニバースに 入ってしまい、サンプルに同一マネージャのバイアスがかかってしまう。

■答え:バイアスの要因について上記の3つのうちから1つ解答できればよい

第8問 問4

過去の定量的パフォーマンスの良さが、将来のパフォーマンスの良さを示すとはかぎらない。 将来のパフォーマンスを評価する上で、過去の定量評価では捉えきれない事象を1つ挙げて簡潔に説明しなさい。

定量評価で捉えきれない事象
a)運用を取り巻く環境の変化
マネージャーの運用手法が市場環境とたまたまあっていた場合等、過去に有効であった戦略が 運用環境の変化により有効でなくなるようなケース

b)運用手法の変更
パフォーマンス悪化等を受け、運用手法を変更したことにより過去のファンドの特性や結果が 変わってくるケース

c)マネージャーの交代
d)組織の変更・人材の入替り
e)運用会社の買収・合併
上記のような理由により、過去の実績からの継続性が失われるケース
■答え:上記の理由から1つ解答できればよい
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