第9問 問1

為替相場決定のマネタリー・アプローチ(オーバーシューティング・モデル)に従って、日米の中央銀行による金融政策変更の決定が 円ドル為替レートにどのように影響したと考えられるか、述べなさい。

オーバーシューティングモデル
オーバーシューティングモデルは、下記の2つの仮定が重要である。

a)各国通貨建て資産の間の完全代替性

b)実質為替レートの変化に対する予想は回帰的

オーバーシューティングモデルによると、名目為替レートは、内外の実質金利格差に比例して購買力平価等により決定する 均衡レートから乖離する。例えば、日本が米国よりも拡張的な金融緩和策をとれば、円金利が低下する一方で、日本のインフレ 率が上昇することが予想される。これにより、円が売られ、ドルが買われ、均衡レート以下円安となる(オーバーシュート)。 一時的にオーバーシュートするが、徐々に均衡レートへと収束していく。これは、金利等の変化に比べ、物価の変動のスピード が遅いためである。
この理論により、均衡レートからの乖離を内外の実質金利差によって説明することができる。

■答え:為替相場決定のマネタリー・アプローチによると実質金利格差に比例して均衡レートから乖離していくと考えられる。 日本が金融緩和策を行い、金利の低下、インフレ率の上昇期待が起こる一方で、アメリカは金融緩和策の終了により、金利上昇、インフレ率の 下落期待が起こり、実質金利格差が拡大して円安ドル高を誘発した。

第9問 問2

日本銀行は、量的・質的金融緩和政策をインフレ期待の醸成に依拠しているところがあるが、購買力平価に従って、この金融政策 変更の決定が円ドル為替レートにどのように影響したと考えられるか、述べなさい。

■答え:購買力平価とは、両国の物価と為替レートは両国間の物価水準の比率に等しい、もしくは、 両国間の為替レートの変化率は両国間のインフレ率の差に等しい。よって、日本銀行がインフレ期待を醸成させることにより 日本の予想インフレ率が高まり、円安ドル高を誘発する。

第9問 問3

消費税増税の延期が日本国債残高の一層の累積に繋がるならば、ポートフォリオ・バランス・アプローチに 従って、この一連の動向がどのように円ドル為替レートに影響したと考えられるか、述べなさい。

ポートフォリオ・バランス・アプローチ
投資家が資産選択の一部として外貨建て金融資産を保有すると、為替レートの変動によりリスクプレミアム(損益)が生じるため、 投資家はこうしたリスクプレミアムなどを考慮した上で最適なポートフォリオ(資産選択)の組合せを作ることから、 為替レートはその際のパラメータとなり、貨幣・資産市場で需給が均衡するように決定されるという理論。
■答え:ポートフォリオ・バランス・アプローチからリスクプレミアムを考慮して、最適な資産選択を行う。 日本国債の残高が一層累積した場合、国債価格は下がり、利回りは増加する。この利回り増加に伴う金利上昇に 比べ、日本国債のリスクプレミアムが上昇した場合、円安ドル高を誘発する。

第9問 問4

以上の円安進行から1年近く経っているのにもかかわらず、輸出数量があまり伸びていない理由を述べなさい。
■答え:長年の円高から、輸出企業が生産拠点を海外に移しており、輸出企業が円安の恩恵を受けてない、もしくは 円安分を輸出価格に反映しており、外貨建では価格に変化がなく輸出数量に変化はないことが考えられる。
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