コーポレート・ファイナンスにて覚えること
E:株式時価総額(自己資本)
D:有利子負債
Re:自己資本コスト
Rd:負債コスト
T:法人税
Rf:リスクフリーレート
Rm:市場の期待収益率
Rm-Rf:マーケットリスクプレミアム
WACC(加重平均資本コスト)
WACC = |
E E+D |
×Re + |
D E+D |
×Rd×(1-T) |
自己資本コスト
Re=Rf+β(Rm-Rf)
FCF(フリーキャッシュフロー)
FCF=営業FC - 投資FC
=営業利益×(1-T) + 原価償却費 - 正味運転資本増加額 -設備投資費
企業価値
βL(レバードベータ)
クリーンサープラス関係
期末自己資本 = 期首自己資本 + 当期純利益 - 配当
サステイナブル成長率
サステイナブル成長率 = (1-配当性向)×ROE
第4問 問1
X社は、以下のデータを基に自社の加重平均資本コストを計算しようとしている。
リスクフリーレート | 1.2% |
X社の負債コスト | 2.5% |
株式市場の期待収益率 | 6.2% |
X社の株式のベータ | 1.1 |
法人税率 | 40% |
X社の有利子負債(借入金・社債) | 2400億円 |
X社のその他の負債 | 1500億円 |
X社の自己資本簿価 | 3400億円 |
X社の株価 | 1200円 |
X社の発行済株式数 | 3.5億株 |
(1)自己資本コストはいくらになりますか。
自己資本コストは、下記式により求められる。
Re=Rf+β(Rm-Rf)
Rfはリスクフリーレートであるから、1.2%、βは1.1、Rmは株式市場の期待収益率であるか、6.2%、
よって、Re=1.2%+1.1(6.2%-1.2%)=1.2%+5.5%=6.7%となる。
■答え :6.7%
(2)加重平均資本コストはいくらになりますか。
加重平均資本コストは、下記式で求められる。
WACC = |
E E+D |
×Re + |
D E+D |
×Rd×(1-T) |
Eは株式時価総額であるから、1200円×3.5億=4200億円
Dは有利子負債であるから、2400億円
Reは自己資本コストであるから、6.7%
Rdは負債コストであるから、2.5%
Tは法人税であるから、40%
WACC = |
4200億 4200億+2400億 |
×6.7% + |
2400億 4200億+2400億 |
×2.5%×(1-0.4) |
よって、WACC=0.04801=4.8%
■答え :4.8%
第4問 問2
X社は、投資プロジェクトAを実施する準備を進めている。同社はこのプロジェクトの工場用地として、同社の
保有する遊休地を利用する計画である。この土地は2年前に他の事業での利用を目的に40億円で購入したが、
その事業が中止されたため使われずにいたものであり、現在も40億円で売却可能と見られている。
また、X社は同プロジェクトの準備として、研究開発に5億円を投じてきた。同プロジェクトは非常に特殊な
領域の事業なので、実施されない場合には、その研究開発成果を他の事業に転用することは難しく、
知的財産として市場性はないと見られている。
同社は投資プロジェクトAのフリー・キャッシュフローを予測し、同プロジェクトの最終的な投資判断を
行おうとしているが、土地価格40億円と研究開発費5億円を初期投資額に含めるべきかどうかについては、
社内でも意見が分かれている。
X社が、(1)土地価格40億円と、(2)研究開発費5億円のそれぞれについて、初期投資額に含めるべきか否か、
理由を付けて答えなさい。
■答え:
(1)土地価格40億円は初期投資額に含めるべき。土地は売却すれば40億円の価値があるため、
機会費用として、初期投資額に含めるべき。
(2)研究開発費5億円は含めるべきではない。埋没費用(サンクコスト)のため。
①埋没費用:既に支出してしまい回収不可能な費用のこと。
②機会費用:既存の資産(設備、建物、土地等)を利用する場合にはその資産を別の用途に
用いたり、売却すれば入るであろう金額をマイナスのキャッシュフローとして考慮する。
③副次効果:競合による既存事業のキャッシュフローの減少額や、既存事業のキャッシュフローを
増加させる効果などの、新規プロジェクトが既存プロジェクトに与える影響や、企業全体の
キャッシュフローの増減を考慮すべきである。
④経費負担:投資プロジェクト実施にともなって実際に新たに発生する経費のみキャッシュフロー
の計算に含めるべき
⑤将来の物価変動:キャッシュフローと割引率との整合性をとることが重要。
第4問 問3
結局、X社は投資プロジェクトAのフリー・キャッシュフローを、以下のように予測した。
(単位:億円)
| 現時点 | 1期目 | 2期目 | 3期目 |
フリー・キャッシュフロー | -300 | 93.2 | 110.8 | 147.6 |
(1)X社は投資プロジェクトAの1期目のフリー・キャッシュフローの計算には、以下の前提数字を用いた。以下の数字を基にX社が予測した
1期目の営業利益はいくらになりますか。ただし、法人税率は40%とする。
(単位:億円)
売上高 | 300 |
営業利益 | ☆ |
原価償却費 | 80 |
支払利息 | 6 |
設備投資額 | 0 |
正味運転資本増加額 | 30 |
■答え:72億円
フリーキャッシュフロー(FCF)は、営業利益×(1-T) + 原価償却費 - 正味運転資本増加額 -設備投資費で求められる。
Tは法人税率。よって、1期目のFCFは、93.2、原価償却費は80、正味運転資本増加額は30、設備投資費は0であるから、
93.2=0.6×営業利益+80-30-0
よって、営業利益=(93.2-50)/0.6=72
(2)投資プロジェクトAの正味現在価値(NPV)はいくらになりますか。ただし、資本コスト6%とする。
■答え:10.46億円
NPVは、投資額とFCFを現在割引価値にして足し合わせればよい。
NPV=-300 + 93.2/1.06 + 110.8/1.06^2 + 147.6/1.06^3 =310.463-300=10.46
第4問 問4
X社の別の事業部からは、投資プロジェクトBが提案されてきた。資金の制約により、投資プロジェクトAと投資プロジェクトBのうち
1つしか実施できない。企業価値の上昇を目的とした場合、X社はどちらの投資プロジェクトを選択すべきか、理由をつけて答えなさい。
ただし、両プロジェクトとも資本コストは6%とする。
(単位:億円)
| フリーキャッシュフロー | 正味現在価値 (NPV) | 内部収益率 (IRR) |
現時点 | 1期目 | 2期目 | 3期目 |
投資プロジェクトA | -300 | 93.2 | 110.8 | 147.6 | ☆ | 7.74% |
投資プロジェクトB | -300 | 212.2 | 77.6 | 47.8 | 9.39 | 8.23% |
■答え:投資プロジェクトA
NPVは投資プロジェクトAが10.46億円と投資プロジェクトBを上回っており、企業価値の上昇を目的した場合は、
IRRよりNPVが高いプロジェクトを選択すべきであるため。